マスカットフェア ワイン紹介③ ピエール・サラベル クレレット・ド・ディー トラディション(フランス/ローヌ地方)

ワインから色々な香りの要素がぽこぽこと感じられたりする。ワインを飲んでいるときは植物や果物、スパイスやその他突拍子もない何かが頭の中でもこもこと浮かんできて、食べ物が大好きな私としてはやっぱりワインって楽しいです。同じ理由でウイスキーもブランデーもジンも大好きです。もこもこモコモコ、ときには複雑な入り組んだ香りを楽しみます。


一方、気持ちいいくらいに気楽な香りを放り投げてくるワインもまたとても良い。他には代えがたい、安心するワインです。これには風味の複雑さ、熟成による深みなどとは別の良さがあると思います。


クレレット・ド・ディーが造られるローヌ地方といえば、どちらかというと南仏として認識されるところ。南仏なんて言うと暖かそうに聞こえますが、ディーという場所はほとんどアルプス山脈西端の麓。ディーから車で1時間半、北に100km上がるとグルノーブルという場所に出ます。グルノーブルから更に北上すると、やがてエヴィアンの採水地にたどり着きます。グルノーブルは1968年の冬季オリンピックが開催された地で、どことなく長野っぽい雰囲気のある場所です。大学があって、学生が多くいて・・・雪が降って・・・「あぁ冬季オリンピックあったとこか」と言われるような。ワイン産地でいうと、ローヌというか、サヴォワというか、むずむず。なんだか曖昧な位置。ディーの近くはそんなところ。要するに、クレレット・ド・ディーはほぼアルプス山中で造られるワインです。


クレレット・ド・ディー トラディションにはミュスカ(=マスカット)大半に加え、南フランスのブドウ品種クレレットが少しだけ混ぜ込まれています。酸少なめのゆるっとしたブドウ。誰もが良く知るマスカットの香りに緩さが加わって、気持ちいいくらいに気楽です。ぽーんと、安心して身を委ねられるワインになります。


気楽気楽。でも、気楽に“もたん”としつつも、同時に“さらり”としているクレレット・ド・ディー。アルプスの雪渓を思わせる透きとおった印象と、空気を包み込むような膨らみのある味わいが柔らかくてとてもいい。柔らかさとゆっくりとした感じがホワイトソースや乳製品の舌触りの柔らかさとスピード感がよく似ている気がして、ふう、グラタンが食べたくなってきました。


グラタンが食べたいです。

お腹が空くワインっていいです。

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