マスカットフェア ワイン紹介① ミューレ シニャチュール ミュスカ(フランス/アルザス地方)

 良い香りのするワインは無条件に嬉しいもの。分かりやすくマスカットの香りがするミュスカのワインはその典型です。食用でも醸造用でも栽培されている万能なブドウで、日本では岡山県のマスカットが有名です。


 こういったブドウからは、その分かりやすさ・親しみやすさ故に廉価なワインも多く造られます。ほんのり甘くていい香りで、質がそんなに良くないものでも美味しく飲めてしまうのが廉価ミュスカの良いところでもあり、悪いところでもあります。ワイン通からは軽く扱われるし、そうじゃない人はこれで満足してもっと良いミュスカへの興味を失ってしまうようです。


 一方で、高級なワインも造られています。その多くは甘口。ナポレオンが死ぬ前にもう一度飲みたいと言った(とか言わなかったとか)南アの「ヴァン・ド・コンスタンス」、アルザスの遅摘み「VT(ヴァンダンジュ・タルティブ)」や「SGN(セレクション・ド・グラン・ノーブル)」。このあたりは飲むとはっきりと「格」が違うので、値段もそれなりにします。


 仔鹿としてはその間、高すぎず安すぎず、普段のちょっとした日に飲めるようなミュスカをお勧めしたいところ。仕事を頑張った日の夜とか、何と無く嬉しい日とか…。


 例えばアルザス地方、ミューレが造るような良いミュスカ。薫り高くも単調さはなく、虹のような香りのスペクトルを見せてくれます。純粋な飲む楽しさがあると同時に、ワインだけでゆっくり飲める質の高さも。


 マスカット、リンゴジャム、レモンバーム、ミント…と爽やかな香りが折り重なっていながら、小難しくない。味わいも辛口でサラッと爽やか。質も高くじっくり飲みたくなる味わいでありながら、流したような余裕があり、良い具合に肩の力が抜けています。


 ミューレはアルザス地方きってのピノ・ノワールの造り手として有名。なので、もちろん自家栽培のピノに関しては気合が入っています。一方で、この「シニャチュール ミュスカ」は同じ村の農家から購入したブドウで造っているもの。出来上がったワインの力の抜け具合は、日常的に楽しむワインとしてとても大切なものだと思います。どちらが素晴らしいワインか、ではなく方向性の違いでしかありません。紅茶や珈琲のような、日頃から楽しめる良さのある、お洒落なワインです。


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